❁テキサス★潤ライフ❁


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かつて、テキサスは海の中だった。というと大げさだが昔々のその昔、地球が未だ現在の大陸の形を成す前、陸地は海への水没と隆起を繰り返しながら現在に至るわけだが、テキサスの大地もかつては海の中だったという話。

広々と広がる大地、360度ぐるりと地平線に囲まれ、割と低めの丘が次から次へと続いたり、岩と砂漠が延々と続いたり。

(一生浪人ブログ、10HRS Off Duty #16 を参考にして下さい。) 

東西南北と中心から向かう方角によって景色も大きく変わるが、大雑把に捉えて目の前に広がるのは Great Plains の開放的な大地。この大地が水中に沈んでいたとあっては、さぞかし漁師が大漁に喜ぶ大きな大陸棚が海の中に広がっていたのだろう。

こんな海に沈んだ目の前の大地を想像しながら、一人丘の上に立って見渡している。もうすぐ夕暮れがやってくる。真っ赤な大きな太陽も一日の仕事を終えて大陸の彼方へと沈んでいこうとしている。


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今回のコロナ禍にあってほとんど毎日耳にした言葉、それは血中酸素濃度だ。中等症から重症に移行する一つの目安のようにニュース報道は伝えていたと記憶しているが、確か92%を切って下がってしまうと重症患者に部類され、高濃度酸素をマスクやチューブで投入されるようになるはずだったと思う。

調べてみると、そうそう、パルスオキシメーター。指先に装着して動脈血酸素飽和度と呼ぶレベルを測るらしい。100%を基軸とし(但し、100%だと過呼吸の疑い)、99% ~ 95%は何も問題なく、95% ~ 93%になるともし患者に心臓や肺に疾患が無い場合医者は焦り出すレベルだそう。そして90%を切ると様々な臓器に影響を及ぼし出すため人工呼吸器療法に切り替える目安となるという事だ。

やはり、そう 7% であった。


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この数字は驚きの数字である。そこでいつもの癖である疑問がフツフツと湧いてきたのが、そう登山についてである。

高い山に登る登山家がキリマンジェロやエベレストなどにチャレンジする場合、よく酸素ボンベだけを背負って最後のアタックする姿を目にする。中学校の理科の授業でも習ったが標高が高くなればなるほど酸素濃度が薄くなっていくと思われがち。これは、言葉の使い方が間違っていて、酸素濃度は地上と何ら変わることはない。気圧が下がる為、空気そのものが希薄になるのであって酸素濃度が下がる訳ではない。

何はともあれ危険な登山。人の呼吸に必要な空気が希薄になり、酸素が少なくなる。血液中の酸素濃度を決定づける血中のヘモグロビン、これの酸素飽和度は標高 2100m を超えると限界に達する。登山家がアスリートと呼ばれる理由はここにある。これ以上の標高に到達するには血中の赤血球量を増やしヘモグロビンを増やすしか無い。人体には様々に順応できる能力 (ん?これは前回の話題"馴れ"にも通じているぞ) がある。登山家はこれを最大限に活かし、パフォーマンスを向上させるていくことができるかどうかが登山家の命にかかってくる。

だが、血液学的に高高度への完全な順応は、その赤血球数が頭打ちになり、増加が止まり終了する。それに要する期間は、おおよそ、km単位の高度に11.4日をかけた日数、たとえば、4,000mの高度に順応するには、45.6日間を要する。どうですこの数字。7%に続いて驚きの45日間だそうですよ、皆さん。


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しかし、この順応には当然のごとく限度があり、登山家は時間をかけながら順応していくが 8,000m を超える高度、これ以上の標高を登山家は「デス・ゾーン」と呼び、ここでは人体は順応することができないそうだ。しかし皆さん、エベレストは 8848mでありますぞ。という事は、最後の登頂アタックとは命を賭けて一気に行くしかない世界なのだ。

ここで、再びの疑問、登山家は先のパルスオキシメーターを装着して動脈血酸素飽和度を測っているのだろうか。果たしてその数字たるやいかに? この疑問に、沖本浩一氏の(登山&アウトドアガイド)ブログを参考にしてみた。

やはり、以前から装着していたそうで、昔は大きくて持ち運びが大変だったほどといっている。現在のように簡単に指先で測れるようになり、データを集計した数字が乗っていたので紹介するが、これが3つ目の驚きである。

標高0m   飽和度99% 脈拍88
  1800m    93%   99
  2700m    91%   90
  3700m    84%   94 
  4700m    75%   102

この数字である。啞然として眺めるだけで酸欠になりそうである。追い打ちをかけるように申しておけば、此の 4700m とはエベレスト登山においてはほんのベースキャンプの標高である。な、なんとエベレスト頂上部は 8848m 。何をか況んやアニハセヨである。


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人間は通常20.9%の酸素濃度下で生活しているため、酸素濃度が低下すると様々な症状が表れることになる。 およそ18%が安全限界(人体に悪影響が無い濃度限界)と言われ、それを下回ると筋力の低下や意識喪失、最悪死亡することになるのですゾーン。 特に脳は酸素消費量が多いので影響を受けやすく、酸欠事故は脳による機能障害に繋がりやすい。危険極まりないのである。

しかし、しかしである。7%、45日に続いて、ほんの2%幅の空気中酸素濃度限界、これらのマージンの中で生きている我々人類。当然水の中では全く生きられないので標高 0m を最低として、標高 9km (エベレストの頂上で生活してる人はいないが) 迄の高さの間でしか生きることのできない存在である。

標高で比較してみると、

★飛行機が飛ぶ高さが、8~12km
★高高度気球が到達する高さが、21km
★ブルーオリジンの最高高度が、100km
★国際宇宙ステーションが、406km

の高さである。地球規模で物事を見れば、国際宇宙基地やベゾス氏のブルーオリジンロケットでさえ、地球がミカンだとしたら人間様がウロウロしているこの世界はほんのミカンの皮のような世界。ましてや生存ゾーンが 9kmとは笑止。


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実に、まさに、笑止である。たったの 9km 。何とも情けない程に地上を這いつくばっている。蟻が、虫が、ミミズが必死に生活している土の上、何も考えず我々はふと彼らを踏み殺してしまうことに何も感じないが、我々と、ミミズや蟻とに、何ら大きな差はあるのだろうか。

実は、我々人類もコモドオオトカゲの如く、バサバサと這いつくばって、噛み殺し合い、真っ赤な血を流し、2本足で立って勝利したと雄叫びを上げているだけに過ぎない存在なのである。
何をそんなに自慢げに、何をそんなに他を見下して、何をそんなに強さを誇示しなければならないのだろうか。


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あなたも私も、彼も彼女も、みんなフンコロガシなのだ。本日も、目的地もわからず、転がしましょうぞよ。

丘の上から地平線を眺め、水中に沈んでいたテキサスの大地に想いを馳せているうち、沈んでしまった夕日を追いかけるように広大な空が紫色に滲んでいく。

さあ、家路につくとするか。


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肩肘張らず、時に追われず、気楽なテキサスライフを皆様と共に。


Hasta la vista. Nos vemos.


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