南部ミシシッピで迎えた朝。スパニッシュモスや蔓の絡んだ木々がシルエットで浮かび、ゆるりと時を刻む。まったりとした とある秋の日。熱い珈琲を入れ、口へと。啜る度に人生の苦味が広がっていく。
南部の朝食というと、グリッツが有名だが、美味しいと思ったことがないんです。誰か美味しい食べ方を教えてくれないかな?今日のメニューはミシシッピーブルースにのって。" Albert King "
① Meet Yo-Jin-Bo the 1st time.
② BBQ, the Southern Comfort.
③ Winter Driving Tips #2
④ the Conclusion
先ずは、朝一番で荷を降ろしに行きます。Senatobia, MS. を出発し Jackson, MS. へI-55で170マイル。ここでアルコール一般を扱う卸業者に運んできたケンタッキーバーボンを全て降ろします。そしていよいよ、ディープミシシッピーへと空のトレーラーで移動、US-49 で北西方向に。
Yazoo city に出るとEast と West の2つに分かれ、西側の US-49W に入っていきます。周囲は一面に広がる Basin の緑。そこに今までに何度ものたうち回ったであろうミシシッピリバーの残影である三日月湖や小さな川の流れがあちこちに。
なだらかな丘が続く道のアップダウンに心地よいグラビティを感じながら、ミシシッピーならではの光景、池に小さな水車が水しぶきを上げているのどかな雰囲気に包まれていく。
75マイルも進むと人口628人の小さな片田舎、" Isola, MS. " に到着する。ここにあるConsolidated Catfish Company にてCatfish(ナマズ) の下ろした白身のパッケージを大量に受け取る。これは今や南部に限らず、どこでも食される一大産業で、私もフライなど大好きです。
① Meet Yo-Jin-Bo the 1st time.
ここで出会った人たち、この町がその後、心の奥底にずーっと残り続けることになるとは、この時点では思いもしませんでした。
オンボロ小屋の前に小さな折り畳みイスをおいて座っている黒人のお爺さんセキュリティーにチェックインを済ませると、ホコリが舞い上がる舗装されていないドックに入りトレーラーを付けます。待っている間にトイレを借りようとトラックを降り、小走りに建物に入っていきました。
丁度、昼ごはん時でランチルームには、この町の人口の半分はここで働いているのかと思うほどの人が、一同に勢揃い。言っておきますが、ここはディープミシシッピ。全て黒人の男と女、お爺さんに若い娘、男性は一様に背が高いようです。真っ黒な肌に大きな瞳が一斉に、突然入ってきた小さな黄色い肌のアーモンドアイを食い入る様に見つめます。
静まり返ったランチルームに響き渡るすこし上ずった私の声が、一人の黒人男性に放たれます。
"トイレはどこですか?"
親切なその男性はランチの途中にも関わらず、立ち上がり、何処にあるかを教えてくれました。立ち上がったその男性は、やはり背が高く、何と彼の胸の位置に私の顔があるデカさでした。この時ほど見上げるとはこういうものかと思い知らされた事はありませんでした。
トイレに入ると、今まで静まり返っていたランチルームが、一斉に大きな笑い声と飛び交う少し下品な会話に包まれます。私は少しムッとしながらも、訳がわからないまま用を済ませようと振り向いて、その瞬間、理由がはっきり分かりました。
男性用の便器のアサガオが高い。下の部分ですら私のへその位置。どうやってやるんや! つま先立ちになったり、片足上げたり不安定になりながら済ませ、期待して待ってるIsolaの住人が待つランチルームに行くと、その後は大騒ぎ。ギャーギャーとはしゃぐ人に囲まれながら、次から次ヘと聞かれる質問に答えていく羽目に。
ま、そういう目立つことは嫌いではない私は一緒になってホイホイと騒ぎ、どうやってトイレしたんだと笑いながら聞いてくる男に、俺のホースは長いからねと答えるとさらに大爆笑。日本人を見たことが無いという彼らに空手の型を披露したりすると、"Mr. Miyagi "と喜んでくれた。
髪の毛を後ろでくくり、無精髭の私を見たその中の一人が、映画で見たサムライのようだと言って、それ以降そこで皆と居た間は、"Hey, Yo-Jin-Bo " と呼ばれ、フレンドリーなひとときを過ごしました。この時より、私のCB無線上のコールサインは、この名に決定しました。
こんなに歓迎されて、出発する時にはこちらが仕事大丈夫かと思うほどの人数での見送り。だいたい出発する時に見送られる事なんて絶対ないのに、スーパーヒーローが感謝に満ちた空気の中で、スーパーヒーローカーで去っていく時はこんな感じかなと思わせてくれる、何故か鼻高々な瞬間でした。
そんな事をこのディープな地で経験して以来、こんな楽しい体験とは裏腹に、いや、こんな体験をしたからこそ、暗闇の中、鬱蒼とした森や林の南部の田舎道を走るたびにどうしても私の脳裏に、寂しい一部の偏見を持った団体による凄惨な事件の数々とその歴史が蘇って仕方が無い。そこ、かしこに無念を孕んだ魂が、依然、浮遊しているようでやり切れなくなります。合掌
B.B.KING Museum & Delta Interpretive Center
400 2nd st. Indianola, MS.
bbkingmuseum.org
Delta Blues Museum
1 Blues Alley, Clarksdale, MS.
deltabluesmuseum.org
② BBQ, the Southern Comfort.
Isola, MS. から Jackson, MS. に戻り、再び I-55 で南へ行くと、つぎはルイジアナ州です。Hammond, LA. で I-10 に乗り州都、Baton Rouge, LA に向かいます。
ここ南部から中西部、さらに北上した場所のかつてプランテーション農場が行われた地域一帯にかけ、今も残る、今も味わえる良き名残があります。
それが、" BBQ " という肉料理です。
スモーキーな香りに焦げた香ばしいバーベキューソースの味。日本で言うバーベキューとここ、南部のBBQとは、全く違うものなんです。
よく日本のお菓子にはバーベキュー味とかありますが、あれは米国のバーベキューソース味ということなんですね。
アメリカのバーベキューソースとは、基本甘めのウスターソースがベースで、それにターメリックやいろいろの香辛料、ブラウンシュガーに塩、とにかく複雑で、自分独自、あるいはその地方独自の味があり、とてつもなく辛いものから、甘いものと、ここ南部では何処のスーパーマーケットの棚にも、少なくとも30種類は並んでいます。
そこで、一つ説明しないといけないのが、日本で言われているバーベキューは、実はバーベキューではないという事です。日本のバーベキュースタイルは、どちらかというとカリフォルニアなどのバーベキューに似ていて、これは”サンタマリアスタイル”のバーベキューであります。バーベキューグリルは使いますが、どちらかというと日本の焼き肉に近く、少し違うのは蓋をして蒸し焼きにすることです。そして、こちら中西部から南部にかけてのバーベキューは全く違う手間暇と歴史をかけた肉料理なんです。これは声を大にして、皆さんに伝えたい。
もともとは、カリビアン地域住民であったネイティブインディアンのスモーク料理をする木製道具である“Barbacoa (バルバコア)”の名前から来ており、それが肉料理そのものを指す様になりました。そして、この地方はかつてアメリカやヨーロッパへの奴隷を送る中継地でもあったため、黒人を介してアメリカ、特に奴隷制の強かった南部に伝わったもので、その時にBarbeque (バーベキュー)と呼ばれるようになり、現在では BBQ とよく表示されています。
さて、その料理の仕方ですが、私自身、何年も本を読み、食べ歩き、黒人の師匠から教えを請い、それでもまだ満足いくものができない、結構繊細なものです。肉の塊、特にテキサスではブリスケットという前胸肉を使いますが、これに独自の配合の香辛料とブラウンシュガーをたっぷりと塗り込み、寝かせます。
冷蔵庫で冷やしたまんまの肉の塊を、華氏160から180度(70から80度)という低い温度のバーベキューグリルで、4時間から6時間ゆっくりと火を通していきます。その間、1時間ごとぐらいに薪やウッドチップを加え、スモークしていき、出来上がる寸前のものをラップしてタオルなどでくるみ温度を逃がさないようにして、2,3時間蒸らして、より調理していきます。
そうして出来上がったものを肉の繊維に逆らう方向でわざとカットして出来上がり。ここで例のバーベキューソースが登場します。こうして出来た肉はつかめないほど柔らかく油がほど良くまったりと絡んで最高です。時間をかけてゆっくりと出来上がるこのBBQなる肉料理、かつては黒人の料理人が半日以上かけて主人たちの食卓に、或いは人が集まるパーティーに供した歴史ある料理なのです。
Forks of the Road
232 St.Catherine st. Natchez, MS.
Cypress Swamp
Natchez Trace Pkwy, Canton, MS.
nps.gov
Oak Alley Plantation
3645 LA-18 , Vacherie, LA.
oakalleyplantation.org
③ Winter Driving Tips #2
最後に、前回に引き続き来る冬に備えて、今までに経験した冬の面白(?)ハプニングを軽く3っつ程書き加えて、皆さんへの注意喚起としましょう。
(1) アメリカ北部では最低気温が半端ないんです。-10度華氏(-24度摂氏)を超えるとこれが境目で、世界が一変します。スキージャケットはもうまるで紙で出来てるかの様な音を立てはじめ、トラックの燃料のディーゼルがゲル化し始めます。必要ならば、凍結防止剤を燃料タンクに投入しなければなりません。
朝起きると、既にダメージがあるタイヤのいくつかは、破裂している事もあり、そして、冷蔵庫の水を出して飲もうとすると、飲んでる最中に一瞬に凍ちゃいます。冷蔵庫は凍らない様に保存する為に使用する事に。
夜寝る前にシャワーを浴びて体を温めてから寝ようとして、トラックを降り、建物に向かって歩く時や帰ってくるその5分間に、濡れた髪は凍りつき、睫毛に髭はサンタクロースのように真っ白に。
(2) 雪の日の運転に欠かせないのは孫の手です。ワイパーを外気の温度が氷点下時に使用するときは、ワイパーが窓に薄く水を伸ばす形になるため、すぐ凍りだんだん太く大きくなっていきます。走りながら、窓から手を伸ばし、ワイパーが外側近くに来たタイミングで、孫の手でワイパーを引っ掛け、反動をつけてスナップで振り落とします。
特に山道で、雪が酷いと、一般車はトラックの轍を頼りに進むために、除雪車よろしくみんなついてくるんですね。一度、ワイパーを弾く勢いがつきすぎて、吹っ飛んでしまい、取り付けていたアームだけが窓の氷を削り、それで出来た2センチほどの隙間を覗き運転し、予備のワイパーを取り付けるため路肩へとゆっくりと移動しました。
当然、後続車たちも全員一緒に路肩で停車。降りしきる雪の山中、両脇は深い谷。ワイパー交換後、みんなを引き連れ、誘導しながら山越えをしました。フー。
(3) 雪もブリザード(氷雪に横殴りの風)となると全く話が変わります。ワイオミングからコロラドに抜ける旅の途中でブリザードに遭遇してしまったんです。
降りつける氷のような雪が吹き付けている側の窓、ミラー全て凍らせ使用不能に。前方視界もほんの5~6フィート程のホワイトアウト。フリーウエイ上に停車している35トンが、風に押されて横に滑っていき、路肩から落ちてしまうトラックも出だす始末に事態は急を要す避難状態。
無線が届く限りの周りのトラッカーたちは声を掛け合いながら協力し、その中のリーダーシップを発揮するドライバーが、無線で速度設定を指示、とにかく無線で声を出し続け、それぞれがまるで繋がる列車のように前方トラックのテールを1メートルの距離で視認しながら動き出しました。
ブレーキはかけられない、信頼だけで一定スピードで必死に喰らいついていき、やっとの思いで4時間かけ60マイルを乗り切り、一番近いトラックストップに入った時には、まるでトップガンのエンディング。トラッカーは雪の中、外で出迎え手を振りまくる。到着した後、ドライバーは肩を叩きあい喜び合ったという感動的結末でした。でも多分十歳は老けたと思います。
ルイジアナ州立ち寄りたい場所
Cypermort Point State Park
306 Beach Ln. Cypermort Point, LA.
lastateparks.com
Southernmost Point in Louisiana
Tide water Rd. Venice, LA
④ the Conclusion
さあ、最後の30マイルです。ミシシッピー川を辿りながら、大西洋にまで出てきました。I-10 で西方向へ、Baton Rouge, LA から湿原地帯を通って Lafayette, LA.まで。
ここの廻りは、雨季には海の上かと思う程水に溢れ、湿原に立つマングローブは根本がラジエーターの様にひだひだになり、地上に出ている幹から根が直接酸素を吸うための呼吸根を持つ様になっている為、一種独特の雰囲気を醸し出します。
そんな湿原のど真ん中に、名物橋が通っています。" Atchafalaya Basin Bridge " と呼ばれる18マイル(29km)に及ぶ風光明媚な橋です。国内3番目の長さで、しかも出口は2箇所しかありません。ま、出口で出ても湿原なので35トンの重さを持つトラックは柔らかい地面に沈み込んでいくので、あまりおすすめはできませんが、速度制限は、18輪トラックのみ55マイル(90キロ)に制限されているので要注意。必ず100%、ネズミ捕りが控えていますから。
ルイジアナ州といえば、カジノとデキシーランドジャズ。いつも立ち寄るこの場所で投宿としましょう。
Silver's Travel Plaza & Casino
2247 Rees st. Ext. Breaux Bridge , LA.
silverstravelplaza.com
✭✭✭✭✭✭✭✭✭✭✭✭✭✭✭✭✭✭✭✭
16日目終了
Senatobia, MS. ⇒ Lafayette, LA.
本日の走行距離 551mi
現在迄、通過した州は••• 全部でのべ29州
CA ⇒UT ⇒ID ⇒OR⇒ WA ⇒ID⇒ MT⇒ WY ⇒ NE ⇒ IA ⇒ MO ⇒ AR ⇒ TN ⇒ MS ⇒ AL ⇒ GA ⇒ SC ⇒ NC ⇒ VA ⇒ MD ⇒ DE ⇒ NJ ⇒ PA ⇒ MD ⇒ WV ⇒ KY ⇒ TN ⇒ MS ⇒ LA
走行距離合計は••• 7523mi(12107km)
✭✭✭✭✭✭✭✭✭✭✭✭✭✭✭✭✭✭✭✭
思い出は、人生のキャラメル。思い出散歩に付き合って頂き、有難うございました。
コメント、ご質問、なんでもお気軽にお聞きください。また次回まで。
Hammer Down !!
南部の朝食というと、グリッツが有名だが、美味しいと思ったことがないんです。誰か美味しい食べ方を教えてくれないかな?今日のメニューはミシシッピーブルースにのって。" Albert King "
① Meet Yo-Jin-Bo the 1st time.
② BBQ, the Southern Comfort.
③ Winter Driving Tips #2
④ the Conclusion
先ずは、朝一番で荷を降ろしに行きます。Senatobia, MS. を出発し Jackson, MS. へI-55で170マイル。ここでアルコール一般を扱う卸業者に運んできたケンタッキーバーボンを全て降ろします。そしていよいよ、ディープミシシッピーへと空のトレーラーで移動、US-49 で北西方向に。
Yazoo city に出るとEast と West の2つに分かれ、西側の US-49W に入っていきます。周囲は一面に広がる Basin の緑。そこに今までに何度ものたうち回ったであろうミシシッピリバーの残影である三日月湖や小さな川の流れがあちこちに。
なだらかな丘が続く道のアップダウンに心地よいグラビティを感じながら、ミシシッピーならではの光景、池に小さな水車が水しぶきを上げているのどかな雰囲気に包まれていく。
75マイルも進むと人口628人の小さな片田舎、" Isola, MS. " に到着する。ここにあるConsolidated Catfish Company にてCatfish(ナマズ) の下ろした白身のパッケージを大量に受け取る。これは今や南部に限らず、どこでも食される一大産業で、私もフライなど大好きです。
① Meet Yo-Jin-Bo the 1st time.
ここで出会った人たち、この町がその後、心の奥底にずーっと残り続けることになるとは、この時点では思いもしませんでした。
オンボロ小屋の前に小さな折り畳みイスをおいて座っている黒人のお爺さんセキュリティーにチェックインを済ませると、ホコリが舞い上がる舗装されていないドックに入りトレーラーを付けます。待っている間にトイレを借りようとトラックを降り、小走りに建物に入っていきました。
丁度、昼ごはん時でランチルームには、この町の人口の半分はここで働いているのかと思うほどの人が、一同に勢揃い。言っておきますが、ここはディープミシシッピ。全て黒人の男と女、お爺さんに若い娘、男性は一様に背が高いようです。真っ黒な肌に大きな瞳が一斉に、突然入ってきた小さな黄色い肌のアーモンドアイを食い入る様に見つめます。
静まり返ったランチルームに響き渡るすこし上ずった私の声が、一人の黒人男性に放たれます。
"トイレはどこですか?"
親切なその男性はランチの途中にも関わらず、立ち上がり、何処にあるかを教えてくれました。立ち上がったその男性は、やはり背が高く、何と彼の胸の位置に私の顔があるデカさでした。この時ほど見上げるとはこういうものかと思い知らされた事はありませんでした。
トイレに入ると、今まで静まり返っていたランチルームが、一斉に大きな笑い声と飛び交う少し下品な会話に包まれます。私は少しムッとしながらも、訳がわからないまま用を済ませようと振り向いて、その瞬間、理由がはっきり分かりました。
男性用の便器のアサガオが高い。下の部分ですら私のへその位置。どうやってやるんや! つま先立ちになったり、片足上げたり不安定になりながら済ませ、期待して待ってるIsolaの住人が待つランチルームに行くと、その後は大騒ぎ。ギャーギャーとはしゃぐ人に囲まれながら、次から次ヘと聞かれる質問に答えていく羽目に。
ま、そういう目立つことは嫌いではない私は一緒になってホイホイと騒ぎ、どうやってトイレしたんだと笑いながら聞いてくる男に、俺のホースは長いからねと答えるとさらに大爆笑。日本人を見たことが無いという彼らに空手の型を披露したりすると、"Mr. Miyagi "と喜んでくれた。
髪の毛を後ろでくくり、無精髭の私を見たその中の一人が、映画で見たサムライのようだと言って、それ以降そこで皆と居た間は、"Hey, Yo-Jin-Bo " と呼ばれ、フレンドリーなひとときを過ごしました。この時より、私のCB無線上のコールサインは、この名に決定しました。
こんなに歓迎されて、出発する時にはこちらが仕事大丈夫かと思うほどの人数での見送り。だいたい出発する時に見送られる事なんて絶対ないのに、スーパーヒーローが感謝に満ちた空気の中で、スーパーヒーローカーで去っていく時はこんな感じかなと思わせてくれる、何故か鼻高々な瞬間でした。
そんな事をこのディープな地で経験して以来、こんな楽しい体験とは裏腹に、いや、こんな体験をしたからこそ、暗闇の中、鬱蒼とした森や林の南部の田舎道を走るたびにどうしても私の脳裏に、寂しい一部の偏見を持った団体による凄惨な事件の数々とその歴史が蘇って仕方が無い。そこ、かしこに無念を孕んだ魂が、依然、浮遊しているようでやり切れなくなります。合掌
B.B.KING Museum & Delta Interpretive Center
400 2nd st. Indianola, MS.
bbkingmuseum.org
Delta Blues Museum
1 Blues Alley, Clarksdale, MS.
deltabluesmuseum.org
② BBQ, the Southern Comfort.
Isola, MS. から Jackson, MS. に戻り、再び I-55 で南へ行くと、つぎはルイジアナ州です。Hammond, LA. で I-10 に乗り州都、Baton Rouge, LA に向かいます。
ここ南部から中西部、さらに北上した場所のかつてプランテーション農場が行われた地域一帯にかけ、今も残る、今も味わえる良き名残があります。
それが、" BBQ " という肉料理です。
スモーキーな香りに焦げた香ばしいバーベキューソースの味。日本で言うバーベキューとここ、南部のBBQとは、全く違うものなんです。
よく日本のお菓子にはバーベキュー味とかありますが、あれは米国のバーベキューソース味ということなんですね。
アメリカのバーベキューソースとは、基本甘めのウスターソースがベースで、それにターメリックやいろいろの香辛料、ブラウンシュガーに塩、とにかく複雑で、自分独自、あるいはその地方独自の味があり、とてつもなく辛いものから、甘いものと、ここ南部では何処のスーパーマーケットの棚にも、少なくとも30種類は並んでいます。
そこで、一つ説明しないといけないのが、日本で言われているバーベキューは、実はバーベキューではないという事です。日本のバーベキュースタイルは、どちらかというとカリフォルニアなどのバーベキューに似ていて、これは”サンタマリアスタイル”のバーベキューであります。バーベキューグリルは使いますが、どちらかというと日本の焼き肉に近く、少し違うのは蓋をして蒸し焼きにすることです。そして、こちら中西部から南部にかけてのバーベキューは全く違う手間暇と歴史をかけた肉料理なんです。これは声を大にして、皆さんに伝えたい。
もともとは、カリビアン地域住民であったネイティブインディアンのスモーク料理をする木製道具である“Barbacoa (バルバコア)”の名前から来ており、それが肉料理そのものを指す様になりました。そして、この地方はかつてアメリカやヨーロッパへの奴隷を送る中継地でもあったため、黒人を介してアメリカ、特に奴隷制の強かった南部に伝わったもので、その時にBarbeque (バーベキュー)と呼ばれるようになり、現在では BBQ とよく表示されています。
さて、その料理の仕方ですが、私自身、何年も本を読み、食べ歩き、黒人の師匠から教えを請い、それでもまだ満足いくものができない、結構繊細なものです。肉の塊、特にテキサスではブリスケットという前胸肉を使いますが、これに独自の配合の香辛料とブラウンシュガーをたっぷりと塗り込み、寝かせます。
冷蔵庫で冷やしたまんまの肉の塊を、華氏160から180度(70から80度)という低い温度のバーベキューグリルで、4時間から6時間ゆっくりと火を通していきます。その間、1時間ごとぐらいに薪やウッドチップを加え、スモークしていき、出来上がる寸前のものをラップしてタオルなどでくるみ温度を逃がさないようにして、2,3時間蒸らして、より調理していきます。
そうして出来上がったものを肉の繊維に逆らう方向でわざとカットして出来上がり。ここで例のバーベキューソースが登場します。こうして出来た肉はつかめないほど柔らかく油がほど良くまったりと絡んで最高です。時間をかけてゆっくりと出来上がるこのBBQなる肉料理、かつては黒人の料理人が半日以上かけて主人たちの食卓に、或いは人が集まるパーティーに供した歴史ある料理なのです。
Forks of the Road
232 St.Catherine st. Natchez, MS.
Cypress Swamp
Natchez Trace Pkwy, Canton, MS.
nps.gov
Oak Alley Plantation
3645 LA-18 , Vacherie, LA.
oakalleyplantation.org
③ Winter Driving Tips #2
最後に、前回に引き続き来る冬に備えて、今までに経験した冬の面白(?)ハプニングを軽く3っつ程書き加えて、皆さんへの注意喚起としましょう。
(1) アメリカ北部では最低気温が半端ないんです。-10度華氏(-24度摂氏)を超えるとこれが境目で、世界が一変します。スキージャケットはもうまるで紙で出来てるかの様な音を立てはじめ、トラックの燃料のディーゼルがゲル化し始めます。必要ならば、凍結防止剤を燃料タンクに投入しなければなりません。
朝起きると、既にダメージがあるタイヤのいくつかは、破裂している事もあり、そして、冷蔵庫の水を出して飲もうとすると、飲んでる最中に一瞬に凍ちゃいます。冷蔵庫は凍らない様に保存する為に使用する事に。
夜寝る前にシャワーを浴びて体を温めてから寝ようとして、トラックを降り、建物に向かって歩く時や帰ってくるその5分間に、濡れた髪は凍りつき、睫毛に髭はサンタクロースのように真っ白に。
(2) 雪の日の運転に欠かせないのは孫の手です。ワイパーを外気の温度が氷点下時に使用するときは、ワイパーが窓に薄く水を伸ばす形になるため、すぐ凍りだんだん太く大きくなっていきます。走りながら、窓から手を伸ばし、ワイパーが外側近くに来たタイミングで、孫の手でワイパーを引っ掛け、反動をつけてスナップで振り落とします。
特に山道で、雪が酷いと、一般車はトラックの轍を頼りに進むために、除雪車よろしくみんなついてくるんですね。一度、ワイパーを弾く勢いがつきすぎて、吹っ飛んでしまい、取り付けていたアームだけが窓の氷を削り、それで出来た2センチほどの隙間を覗き運転し、予備のワイパーを取り付けるため路肩へとゆっくりと移動しました。
当然、後続車たちも全員一緒に路肩で停車。降りしきる雪の山中、両脇は深い谷。ワイパー交換後、みんなを引き連れ、誘導しながら山越えをしました。フー。
(3) 雪もブリザード(氷雪に横殴りの風)となると全く話が変わります。ワイオミングからコロラドに抜ける旅の途中でブリザードに遭遇してしまったんです。
降りつける氷のような雪が吹き付けている側の窓、ミラー全て凍らせ使用不能に。前方視界もほんの5~6フィート程のホワイトアウト。フリーウエイ上に停車している35トンが、風に押されて横に滑っていき、路肩から落ちてしまうトラックも出だす始末に事態は急を要す避難状態。
無線が届く限りの周りのトラッカーたちは声を掛け合いながら協力し、その中のリーダーシップを発揮するドライバーが、無線で速度設定を指示、とにかく無線で声を出し続け、それぞれがまるで繋がる列車のように前方トラックのテールを1メートルの距離で視認しながら動き出しました。
ブレーキはかけられない、信頼だけで一定スピードで必死に喰らいついていき、やっとの思いで4時間かけ60マイルを乗り切り、一番近いトラックストップに入った時には、まるでトップガンのエンディング。トラッカーは雪の中、外で出迎え手を振りまくる。到着した後、ドライバーは肩を叩きあい喜び合ったという感動的結末でした。でも多分十歳は老けたと思います。
ルイジアナ州立ち寄りたい場所
Cypermort Point State Park
306 Beach Ln. Cypermort Point, LA.
lastateparks.com
Southernmost Point in Louisiana
Tide water Rd. Venice, LA
④ the Conclusion
さあ、最後の30マイルです。ミシシッピー川を辿りながら、大西洋にまで出てきました。I-10 で西方向へ、Baton Rouge, LA から湿原地帯を通って Lafayette, LA.まで。
ここの廻りは、雨季には海の上かと思う程水に溢れ、湿原に立つマングローブは根本がラジエーターの様にひだひだになり、地上に出ている幹から根が直接酸素を吸うための呼吸根を持つ様になっている為、一種独特の雰囲気を醸し出します。
そんな湿原のど真ん中に、名物橋が通っています。" Atchafalaya Basin Bridge " と呼ばれる18マイル(29km)に及ぶ風光明媚な橋です。国内3番目の長さで、しかも出口は2箇所しかありません。ま、出口で出ても湿原なので35トンの重さを持つトラックは柔らかい地面に沈み込んでいくので、あまりおすすめはできませんが、速度制限は、18輪トラックのみ55マイル(90キロ)に制限されているので要注意。必ず100%、ネズミ捕りが控えていますから。
ルイジアナ州といえば、カジノとデキシーランドジャズ。いつも立ち寄るこの場所で投宿としましょう。
Silver's Travel Plaza & Casino
2247 Rees st. Ext. Breaux Bridge , LA.
silverstravelplaza.com
✭✭✭✭✭✭✭✭✭✭✭✭✭✭✭✭✭✭✭✭
16日目終了
Senatobia, MS. ⇒ Lafayette, LA.
本日の走行距離 551mi
現在迄、通過した州は••• 全部でのべ29州
CA ⇒UT ⇒ID ⇒OR⇒ WA ⇒ID⇒ MT⇒ WY ⇒ NE ⇒ IA ⇒ MO ⇒ AR ⇒ TN ⇒ MS ⇒ AL ⇒ GA ⇒ SC ⇒ NC ⇒ VA ⇒ MD ⇒ DE ⇒ NJ ⇒ PA ⇒ MD ⇒ WV ⇒ KY ⇒ TN ⇒ MS ⇒ LA
走行距離合計は••• 7523mi(12107km)
✭✭✭✭✭✭✭✭✭✭✭✭✭✭✭✭✭✭✭✭
思い出は、人生のキャラメル。思い出散歩に付き合って頂き、有難うございました。
コメント、ご質問、なんでもお気軽にお聞きください。また次回まで。
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一生浪人
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雪道のホワイトアウトは秋田でも経験しますが、話にならないね!恐ろしや!
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